2004年夏学期全学FD

2004年度第1回全学FD
「授業評価から授業改善へ」-授業の工夫の実際-

日程 7月21日(水)<13:00~17:00>

プログラム

第1部(13:10-14:20)「考える機会としての授業を目指して」
-学部教育科目「消費市場論」での取り組み-

松井 剛 助教授(商学研究科)

第2部(14:30-17:00)Workshop「授業評価から授業改善の具体化へ」
- 授業の工夫の実際 -

浅野 誠 氏(元琉球大学・中京大学教授)

本年度第1回全学FDが開かれる

去る7月21日(水)の午後、本年度第1回全学FDが西キャンパス1101教室で開催された。今回で、「全学FD」と銘打った研修会は2000年12月に第1回を開催して以来、延べ8回を数える。

今回の内容は、「授業評価から授業改善へ──授業の工夫の実際」と題して本学で実施している授業評価の結果をもとに各教員が授業改善にどうつないでいくか、そのために具体的に役立つものをということで企画された。第Ⅰ部は、本学教員による授業実践報告、第Ⅱ部は、外来講師による授業改善の工夫の実際を体験できるワークショップである。ⅠⅡ部合わせて4時間強にわたる研修会となった。

第Ⅰ部の実践報告は、商学研究科の松井剛助教授が「考える機会としての授業を目指して」と題して、ご自身の学部教育科目の授業「消費市場論」の取り組みを報告された。氏は、毎回氏のホームページ上に内容を予告し、当日使用する資料などをそこからダウンロードして学生が事前に入手するようにし、受講者たちが授業内容に対するレディネスをもって授業に臨めるように工夫したり、また、次の授業で扱う内容に関わってQuizを提示しておき、その問題が本番の授業で解き明かされていくような工夫や実際の授業での発問と対話を駆使して、できる限り学生たちの能動的な思考を促そうとする工夫をしたりして取り組んでいる様子を報告された。

このほか、事前に配布するシラバスが非常に行き届いた内容であること、Quizへの解答や授業中の自分の発言内容あるいは授業についての感想や意見を書いて授業終了時に提出する「フィードバックシート」の活用、多面的な評価の工夫と提出レポートに対するコメントの学生へのフィードバックなど、全体としてとても工夫された授業で、受講する学生の能動的な学びを生み出すことを意図された非常に行き届いた授業であることが伝わってきた。

第Ⅱ部のワークショップは、長く大学における授業改善を研究テーマに取り組んできておられ、各地の大学のFDでワークショップスタイルの研修会講師で活躍中の元中京大学教授・浅野誠氏による講義とミニワ-クショップであった。氏は、「授業評価から授業改善の具体化へ──授業工夫の実際」と題して、本学のFDへの取り組みの全国的動向の中での位置、本学で実施している授業評価結果から窺えるいくつかの問題点などについての講義の後、「授業改善の力点をどこに置くか」「授業科目にサブタイトルをつけよう」「授業で立つ位置──教壇愛好派か学生接近派か」「発問づくり」などのテーマを扱って参加型のワークショップスタイルで進められた。

前半の講義では、本学のFDの段階は、啓蒙的な第一段階を経て具体的な授業改善を指向する第二段階に入っているといえること(ちなみに第三段階は、授業改善の営みの恒常化の段階)、しかし、この段階にはこのような授業改善のための具体的な研修のほか、公開授業とその相互批評、授業環境の改善、教育紀要の刊行や教育業績の評価の実施、授業改善のための推進体制の整備、授業過程に対するより突っ込んだ授業評価、新任教員へのサポート体制の整備なども企画されてよいこと、一橋大の授業評価は全体として円形に近いレーダチャートになっており、改善の焦点がわかりにくい設問になっている点に工夫の余地があること、授業で学生の質問や発言がでることを前提にした設問があるが、一橋ではこのような授業が一般的なのかどうか吟味が必要なこと、教員が授業方法の改善に関心が向かわないのには書き言葉を軸に研究している人が話し言葉を軸に授業をするときのそのズレに対する無関心(無意識)があること、アンケート回収率の低さが目立つがこれは授業のリアリティをどれだけ反映しているかを考える必要があること、などについて指摘された。

後半は先に紹介したテーマで参加型のワークショップが展開された。40名近くの参加者は、それぞれのテーマについてディスカッションをしたり、ブレインストーミング風にアイディアを出し合ったり、感想や意見を述べ合ったりと、熱心に(その気になって)ワークショップに参加している様子が窺われた。

今回のFDの内容は、後日、報告書にまとめられると思われるので、成果と今後の課題についてはそれに譲るが、全体として参加者にとって啓発的で、能動的に「授業」に参加することのそれなりの実感を得た研修会となったように思われる。また、授業評価のあり方についても、一般的で全体的な評価項目の選定に加えて、授業過程(内容と方法)により突っ込んだ授業評価の必要性を感じさせられた。そして最も強く感じたことは、このようなFD機会もさることながら、日常的な実践交流の機会を設けることと個々の教員の方々の授業診断と改善支援の体制を早急に整備することの必要性についてであった。

助手が10数名、職員が若干名、学生が数名という構成であった。また、冒頭でいつものように石学長から、本学における授業改善努力の必要性と今回のFDの意義についてご挨拶をいただいたことと、これもいつものように茶菓の差し入れをいただいたことに謝意を表したい。

2004年8月1日
前大学教育研究開発センター長 藤田和也

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